家づくりにまつわること(18):耐震診断の背景を知る


中古住宅購入後の住宅診断と混同されやすいのが耐震診断です。

住宅診断が行われれば、構造耐力上も問題ないんだな…と思われる方が多いですが、前回の投稿の通り、住宅診断は住宅診断士もしくは建築士が行い、建物の劣化状態やリフォームがどの程度まで必要かを点検し、一方の耐震診断は、耐震診断士もしくは建築士が行い、現在の耐震基準と照らし合わせて建物の耐震性能を診断します。中古住宅の現状を正しく知るには、住宅診断と耐震診断の両方が必要です。

この投稿では、耐震診断についてシェアしたいと思います。


◉ 耐震診断の位置付けと背景


そもそも耐震診断とは何?法律で定められている内容?と疑問に思われる方もいらっしゃるかと思いますので、その辺りから解説します。

耐震診断に加えて耐震補強の考え方は「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」の制定と共に生まれた内容です。

これは、1995年に発生した阪神・淡路大震災で約21万棟の家屋が全半壊し、亡くなられた人の8割弱が建築物の倒壊等による圧迫死であり、その9割が古い木造住宅であったことがベースの背景です。

そして、国土交通省の調べによると、建築物の被害の傾向を考察したところ、現行の新耐震基準(1981年(昭和56年)施行)以前(旧耐震基準)に建築された建築物に被害が多く見られ、一方、それ(1981年(昭和56年))以降に建築された比較的新しい建築物の被害の程度は軽く、現行の新耐震基準は概ね妥当であると結論づけられました。

旧耐震基準と新耐震基準の違いについては、別の投稿で詳しく記述しますが、今はそもそも耐震性確保の考え方が変わった程度で捉えて頂けたらと思います。

このことから、現在の新耐震基準を満たさない建築物について積極的に耐震診断や改修を進めることを目的に1995年(平成7年)に「耐震改修促進法」が制定されました。これは後々バージョンアップされていくのですが、学校、病院、ホテル、事務所など特定の用途の建物で一定以上の面積の建物を対象に所有者の努力義務を求めています。従って、一般的な木造住宅においては努力義務もありませんが、大地震の教訓から各自治体は政策として耐震診断・耐震補強に対して補助・融資を実施して推進しているところが数多くあります。


◉ 耐震診断は何を確認する調査なのか?


建築における『構造体』は人間の骨にあたる部分です。この構造体は建築当時に当時の方基準のもとに構造計算され、工事されて耐震性能を持つとされています。しかし、住宅の耐震性能は新築時のまま保たれるわけではなく、例えばシロアリの被害に遭う、雨漏りで躯体の耐久性が衰える、壁面のひび割れ、接続金物の緩みなどの経年劣化で性能は日々変わっていきます。


耐震診断は、既存の構造体が大地震(震度6強~震度7の地震)発生時における、木造住宅の倒壊の可能性に関しての診断のことであり、①実態を調査する、②計算上・計画上も診断・確認することで評価されます。そして、耐震診断の結果に基づいて、必要あれば適切な補強(耐震補強)をすることで、長く安心して住むことができるという意味合いがあります。

また、耐震診断には、一般診断法と精密診断法の2種類があります。一般診断法は精密診断法に比べると簡易的な内容であり、一般的に耐震診断と言えば一般診断法になります。

ここは目的によって、診断方法をどちらにするか決定する方が良いです。


一般診断法では、現況における目視調査と図面の確認によって行うため、原則として建物の一部を解体して調査することまではしません。つまり、壁・床・天井内を直接見て確認するわけではないので、まずは簡易的に中古住宅の耐震性(大地震時の倒壊の可能性)を確認するためだけを目的とした場合を指します。一般診断法は精密診断法に比べて安く実施できるというメリットがありますが、よく利用される理由としては、購入前の物件を解体することができないため、一般診断法で調査するしかないという状況が多いです。


精密診断法では、一般診断法の範囲に限らず、壁・床・天井を部分的に解体して内部構造まで直接見て確認します。そのため、診断後に必要あれば耐震補強をする方針ということでしたら、精密診断法はマストになります。しかし、診断者の判断や方針によっては一般診断法でも床下や屋根裏を確認することはよくあるため、精密診断法に近い情報が入手でき、耐震補強計画のベース情報となるケースも多々あるため、診断者選びも後々のことを考えて選定する必要があると言えます。


◉ 耐震診断の現在


平成28年4月に発生した熊本地震では、旧耐震基準の建築物に加え、新耐震基準の在来軸組構法の木造住宅のうち、接合部等の規定が明確に規定された平成12年以前に建築されたものについても倒壊等の被害が見られたのが、これまでと違う点です。そのため、旧耐震基準の住宅に加えて、新耐震基準の住宅の一部(昭和56年6月〜平成12年5月の間に建てられた住宅)を対象として、耐震診断よりも効率的に耐震性能を検証する方法「新耐震木造住宅検証法」が一般財団法人日本建築防災協会により作成されました。(https://www.mlit.go.jp/common/001184898.pdf)

これは、費用のかかる耐震診断の前に所有者自身が調べられる範囲をチェックリストにしてくれており、これにそって評価しておくことで、専門家(建築設計者・耐震診断士)へ相談すべきかどうか判断できる目安を提供しています。

まずはご自身の所有している、もしくはこれから所有する住宅を自身が知るという意味でも、一度確認・評価してみるのも1つです。


この投稿では、耐震診断を深掘りしてそのルーツや現在について述べました。次の投稿では具体的な調査方法や調査によりわかることについてシェアしたいと思います。