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家づくりにまつわること(13):リモートと住宅設計


 

新型コロナウィルスの影響で外出にも戸惑いを覚える現状では、基本はweb会議などのリモートでプロジェクトを進めるケースが増えてきました。これからいつ第2波、第3波が来るかわからない最中では、よりそれが加速していくでしょう。

対面して物事を進めるという住まいづくりの基本を避けなければいけないとなると、住まいづくりにおけるコミュニケーションの取り方はどのように変わっていくでしょうか。

この投稿では、リモートと住宅設計について少し考えてみたいと思います。


コミュニケーションと建築設計の関係


家づくりは建て主に加えて、設計者や工事会社、メーカーといった多種多様な人々が関わるため、その過程で起こる問題の9割はコミュニケーション不足で起きていることだと感じます。

この建築づくりにおける「コミュニケーション=共有すること」は大きく分けて「設計時」のものと「工事時」のものに分かれます。


設計者からすると、設計時は何も無い中からつくり始めるので条件や要望をもとにできることとできないことを確かめながら、まだ見ぬ生活感や居心地といった感覚を生み出すために計画して建て主と共有し、図面という設計ツールに落とし込みます。一方で工事時になると、その図面をもとにどのように実現するかという現実的、物理的な会話になるという点でその質は違うものです。


建て主の立場に立ってみると、設計時は設計者から設計内容の説明を受けて自身の住まいを想像し、図面なり模型に身を投じて考えます。機能的な不足はないか、生活スタイルにあっているか、必要な性能は設計に含まれているかを確認していくことでしょう。

一方、工事時は設計者から工事監理状況を聞いて、現場の進捗を確認します。従って、設計者側と同じく設計時と工事時のコミュニケーションのあり方は違いますし、工事時は既存のSNSやLINEなどのツールがあればリモートでも対応できそうです。一方、住まいづくりの基本方針をつくる設計時のコミュニケーションはまったくのリモートでは難しそうです。



設計検討の特徴


設計時の検討を短く表すと、様々な建築案を仮モデルとして立ち上げ、それぞれを比較してメリット・デメリットを把握しながら、都度優先するものを選んでいくことで、一つの建物モデルにまとめていくことです。ちなみに、仮モデルを立ち上げるとは模型や3Dモデルのように実物にできる限り近づけた形で建ててしまうということです。

つまり、実際の建物を計画する過程で、「いくつもの建物を実際に近い形で建てている」というニュアンスが近いと思います。(これは設計事務所しかしていないし、設計事務所により程度や検討量に差はあります)


この設計検討での特徴は、いろいろと比較するということであり、その比較するものが一月前のモデルであったりするわけなので、対面していれば「これですよ!」とすぐ出せるのですが、離れているとそうもできない。そのため、比較している対象がどれを指しているのか理解してもらえにくい状況を良く経験しました。

それでは、この「比較」によって何がわかるでしょうか。

例えば、計画初期には駐車場の取り方によって建てられる建物の建坪や形状も違うし、そのメリット・デメリットも違う。こういったことを一つ一つ「比較」によって理解できるし、必要なこともわかってくる。つまり、「比較」することで住まいづくりという複雑な情報を一歩一歩整理できる・共有できるということです。

ちなみに、このことを建て主と共に行いたいというのが、当社が目指す住まいづくりです。



感覚を共有することの難しさ


先ほどの「比較」によって整理・共有できることとして、もう一つは感覚的な側面です。

住宅づくりにおける生活感や居心地といった感覚は、設計者が勝手に生み出せるものではなく、建て主との対話の中で比較しながら生まれてくるものです。感覚や住まい方はみんな違うので、正解がないことが理由にあります。

要は「お互いに共有している画や物の意味を同じように理解している」ことができていれば良いのですが、設計時の「感覚」という言葉で表しにくいことの共有がリモートだけでは今難しくなるように思います。

もちろん対面すれば間違い無い可能性が高く、ビデオ通話、電話、ライン、メールとなっていくにつれて共有情報は薄れていったり、誤解がおこりやすくなることは言うまでもありません。

このことを解消する方法としてVR/ARが注目されています。

ゴーグルをかけると3Dでつくられた空間体験をさも実体験のように感じられるため、空間感覚共有をしやすいことが特徴です。近年では地方の工務店でさえ採用しているコミュニケーションツールです。

ウェアブルの観点から、今後5年〜10年の間にアイフォンがグラス型になり、一般の人が常にリアル・バーチャル(VR/AR)を行き来できるようになると、未来が現実に近い形で体感できるようになるでしょう。

そうすると建て主自らが住宅をデザインできるようになる、建設従事者が減少することが確実な将来では3D加工機で自力に工事する新築DIYプロも生まれことも考えられし、各地分散されたデジタルファブリケーションがものづくり拠点となることも考えられます。


しかし、生活感や居心地をつくりだすことは難しいのでは?というのが私の見解です。

加えて、あまりにVR/ARに頼りすぎると住まいづくりにおいてはそれだけに実際に完成した時の感動も薄れてしまうことは間違いないと考えています。

生活感や居心地は分析しないとわからないし、追求しないとわからないこともあります。

感動の種は想像力です。想像力を体感でつぶしてしまうと楽しいのかなと感じてしまう部分もあります。


想像力を高めるには、共有する対象は抽象的な対象の方が良い = 模型が有力だと思います。

今の所、模型で比較と共有を促進し、VR/ARで足りないところを補っていくというのが相応しい方向性だと考えています。

古代から使われていた模型というコミュニケーションツールは未来も残り、多種多様な想像力を生み出し続けるでしょう。

以上のことから、設計時の住居に必要な感覚を確かなものとするために、当社ではリモート設計サービスを提供し始めました。


これは、プランによってサービスの内容は違いますが、オーソドックスなプランですと2週間に2タイプの模型とプラン(間取り)のセットが自宅に届くというものです。

想像してみると、様々な生活の未来が送られてくるイメージはとてもワクワクしますよね!当然届いた後は、リモートでお打ち合わせをさせて頂きますので、その中身は届くたびに整理されたものとなっていくでしょう。


このようにして我々と建て主が共有して同じモデルとプランをそれぞれ持つことで、比較をしやすくする=丁寧に住まいづくりを行い、必要なことだけを整理するだけでなくて、感覚も共有したいということがこのサービスを始めた意図になります!

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