前投稿の復習ですが、家など建物を建てる時には、大きく分けて2つの依頼(発注)方法があることはお伝えしました。
おさらいしますと、
・設計・施工一括発注方式 → ハウスメーカー、工務店、ゼネコン
・設計・施工分離発注方式 → 建築家 + 工事会社・工務店など
ここで、ハウスメーカー、工務店による設計・施工一括発注方式はコスト・工事中のことが不透明であり、法律・耐震・省エネといった技術的な面の対応が比較的限定されているため、建て主にとって最適で理解できる家づくりができているか「わからない」状況であることを書きました。
家だけに関わらず、建物を長持ちさせるには、実際に使うユーザーが、建物のことについて理解し、使用していく中で愛情持って必要に応じてメンテナンスをしていく態度が必要になります。そのためにも、建て主の生活感やライフスタイルにあった最適な家であり、かつ家の特徴や気にしておくところを理解していることが必要になります。
この最適をつくり、コストや工事の状況や中身を説明するのが「建築家」の役割の一つなのです。
前ブログに続き、今回は正確に知られていない建築家(建築設計事務所)の役割についてシェアしたいと思います。
◉ 建築家の役割
当社の考える建築家の役割を大きく分けると以下になります。
1. 建て主の生活感やライフスタイルにあった最適な提案と工事図面の作成
2. 工事金額の査定と建て主への説明(場合により減額提案や交渉)
3. 設計図面に対する工事内容の一致の確認と建て主への報告(工事監理)
4. 直接契約関係である建て主と工事会社との良好な関係継続を図る (アフター対応)
弊社ではこれらに加えて建て主への最適な提案をするため、土地探しや用途提案・土地活用提案も行なっておりますが、それはまた別の機会とします。
特に上記3,4の項目の本当の意味が理解されていないため、これについて説明します。
◉ 第三者として動く建築家
ここで、「設計・施工一括発注方式(ハウスメーカー、工務店など)」と「設計・施工分離発注方式」の関係を比較します。
まず、「設計・施工一括発注方式(ハウスメーカー、工務店など)」。
良く耳にすることの一つとして、ハウスメーカー、工務店に依頼した方で、工事中に寝室に棚を追加したいと思っても直接依頼しないといけなくて気が引けたり、見積りをもらったけど、一つ一つを確認していたらイライラされた、モメそうになったという声があります。
これは建て主と工事会社の2者で計画を進めているため、直接の交渉が必然となってしまうことが理由にあります。従って、きちんと全体をみながら交渉できる方なら良いのですが、なかなか難しい話です。
次に設計・施工分離発注方式」の関係です。
一方、建築家を入れることによる設計・施工分離発注方式の場合、ポイントは建築家が直接契約のある建て主に寄り添いながら「第三者」として工事業者と接する点です。つまり、工事の見積りや工事状況について、「第三者」として評価・判断し、交渉することができます。
言い換えると、契約関係は上図の通りですが、実質の関係性は建主 ⇄ 建築家 ⇄ 工事会社 となっているケースがほとんどです。
しかし、そう言いながらも建築家の言っていることや認識が間違っていたり、工事会社でないとわからない知見や事情もあります。
この方式の良いところは、誰が正しいではなく、お互いが管理し合いながらリスクを回避し、建物に良い方法を議論や知見を出し合いながら工事が進められる、その過程にあります。
工事現場では、現場監督だけでなく、色々な職人さん方を含めて打ち合わせすることもあり、朝から晩まで続くケースもよくあります。
しかし、一方向からの情報では決まらない分野だからこそ、このようにいろいろな立ち位置の人達が同じものに向かって議論する場が必要であると感じます。
そして、これが建築の魅力の一つでもあるのです。
◉ ハウスメーカー、工務店等が採用している設計・施工
一括発注方式は海外ではほとんど行われていない
日本では驚くほど普及している設計・施工一括発注ですが、海外ではほとんど行われません。
つまり、海外では設計会社と施工会社を分けて発注し、設計会社に施工の状況を確認させることが一般的です。この理由はコスト・スケジュール・品質を工事会社と建築家の二重チエックさせることを重要視しているからです。
また、日本建築家協会など各種機関では、従来から長きにわたり設計・施工一括発注方式を兼業と呼び、禁止事項という解釈をとっています。
それでも、設計施工一括方式が採用されている実例が多いことは、信用・信頼で物事が進む日本人特有の性格が影響していると考えています。
◉ 総額コストはほぼ同じ
ハウスメーカーや工務店を通じて住宅を実現することと、建築家を入れて住宅を実現することを比較しても、実現までの金額はほぼ同じだと言われています。
理由は別の機会に述べますが、建て主の「わからない」を解消し、工事会社との関係を取り持つ第三者・建築家を入れることで、理想的な家と理想的な関係をつくる。質を求める今の家づくりに必要な考えだと思います。
それでは次回は建築家に家を依頼することのデメリット?を書きます! ←ハテナが大事です(笑)
Comments