今年は7月に事務所を開業し、あっという間に年末です。
良い機会なので、令和元年かつ、独立元年である今年の思考過程や各プロジェクトについて振り返ってみたいと思います。


独立してやりたいこととは?
どのような建築家になりたいか?どのような事務所にしたいかという自問自答は今年一番考えたことの一つです。
独立する前に色々な地で経験を積む中で、建築計画・設計は、与件(土地・周辺状況、社会状況、施主要望など)を調査・分析し、プロジェクトに関わる人を増やし、様々な目でプロジェクトを分析・構成していく、その回数が多くなれば、出来上がる建物の「ソフト面との一致」、「施主の建物への愛着」、「周辺・地球環境への影響」、「コミュニティへの参加」、「未来への可能性」という評価軸に対して、プラスになることがわかりました。
つまり、
・「プロジェクトに関わる人数を増やし、様々な目でプロジェクトを分析・構成する」
→オープンなコミュニケーションを実現する
・「与件との対話を可能な限り行い、敷地周辺や地球との関係性を考える」
→建築される場所の特性とフラットな視点で向き合う
・「建築する前後と未来の可能性を追求する」
→常に最新技術や社会状況を確認し、未来の建物の在り方を検討する
・「デザインと技術を融合し、コストパフォーマンスを追求する」
→デザイン・技術・コストのバランスを図る
「その場所のコミュ二ティ・環境に具体的に入り込む」
→コミュニティに参加し、関係を構築する
これらのバランスを取ることが、建築することを起点とした未来を考える上で重要であると考えます。SDGsを推奨する上でもこの考え方は欠かせません。
建築物は創ることが目的でなく、それを中心とした未来をどのようなもの・ことにしたいかであると思います。それが住宅であれば「生活感」、企業系の建物であれば「企業理念」となって現れます。
そして、当社では、社名の「メラーキテクチャ」の示す通り、以上のことを最大化できる事務所にしたいと考えています。
結果的に、当社では「やりたいこと」と「予算」を持ちながら、どのように進めれば良いかわからない方々から相談を頂くことが多いです。
一般的な設計事務所とは少し違うこのスタンスは、実は建築家たらしめる根源のように捉えています。
プロジェクトを振り返ってみます!
当社は建築研究所らしく研究も日々行なっています。
それは国内外のコンペティションを通じ、各地の文化や考え方に触れ、社会状況へ呼応した提案を行うこと、加えて様々な用途や規模を横断することで、実務へのアドバンテージをつくることを目的としています。
今年参加したコンペティションから抜粋して振り返ってみたいと思います。
前項の内容を踏まえてお付き合い頂けたら。
Opened school with Recycle wall

敷地はメキシコ、トゥルム。
ご存知の方の方も多いかと思いますが、メキシコは2013年時点でPETボトルの消費量が世界第2位で、国民性と十分に確立されたリサイクルシステムが存在しないために、リサイクルされず、捨てられ街中に散在している光景が良く見られます。
プラスチックゴミは、少しでも汚れているとリサイクルした時に不純物が入ってしまい、上手く結晶化されない特徴があるため、「分別」の管理は人の目で行われているようです。(洗浄は機械ですが) そのため、リサイクルする方がコストがかかるため、十分な施設環境がないとリサイクルは難しいのです。
この計画では、ペットボトルという容量のあるユニットをそのまま利用することで、その中にプラスチックリサイクルされたパレットを詰め込む、もしくは多色なペットボトルを意図的に配置することで、外壁の表情を利用者がカスタマイズしてつくることができる リサイクルウォール を提案しました。取り替え可能な仕組みを取り入れ、劣化すればただペットボトルを洗浄して取り替えるだけでよく、風にゆれる簾のような外装材を纏った学校のプロジェクトです。
星乃珈琲の森


星乃珈琲店の従来の企業理念を最大化し、 郊外店舗ながら街に開かれ、顧客や周辺の人々に愛されていく店舗のあり方が望ましいと感じました。
ハンドドリップの軌跡のように敷地全体に有機的にまんべんなく広がる利用者のシークエンスと滞在スペースを、開発行為にあたらない程度に起伏を設けた地形と同時に計画した後に、樹木と屋根を同時に配置して店舗を計画することとしました。
屋根をつまみ上げ、開口部とすることで、居住域の籠った感とその上の開放感あるスペースを計画し、 多様な関係が同在する空間を目指しました。
Centripetal community center for residents
#ペルー #コミュニティセンター #0〜100㎡
※当プロジェクトはファイナリストに選出されました!

敷地はペルー、リマ。
リマの人口約1000万人の内、60%の人々は定住が認められていない山沿いのエリアに集中して居住し、インフラも整っていません。
居住を認められていない人々にとって、コミュニティの継続だけが居住することを容認し、生活環境の改善を目指すことができると思います。ここで計画する新しいコミュニティセンターは、脆弱な居住環境とインフラの整っていない周辺状況を考え、安全と安心があり、かつ自然エネルギーを最大限に活用することで、持続可能でコミュニティが育まれる環境を目指しました。


具体的には、周辺の脆弱な屋根に反して、屋根を透明素材で立体的に構成し、屋根が日中の室内照度を補い、その上、片流れ形状にすることで雨水をシンプルに導き、貯水します。この大きな屋根を支持する構造は、居住域を多様な用途に対応できる無柱空間としながら、近年の気候変動も見据えた荷重設定により、比較的安全に計画しています。
そして、夕刻や霧の発生時は視認性が悪くなるこのエリアにおいて、透明素材で覆われた大きな屋根を通じて照明の光が外側に漏れ、山なりの傾斜地に広がる人々にとって求心性あるランドマークとなることを意図してます。

来年は具体的に計画が動く物件もあり、また、より多くのコンペティションに参加を予定しています。乞うご期待です!!
来年もどうぞよろしくお願い致します。
※メラーキテクチャ のインスタグラム「メラスタグラム」では、
HPで表現しきれない検討過程や各プロジェクトのシステムをUPしていく予定です。
近日追加UPします!
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