top of page

家づくりにまつわること(15):リフォーム?建て替え?を迷ったときの知識


 

「古い実家を二世帯住宅にしたい」「親から中古住宅を譲り受けた」のように既存住宅付きの土地を取得した場合、最近多い質問の中にリフォームと建替えのどちらがいいのかということを良く聞かれます。悩まれるのはそれぞれにおける金額・性能・将来性からどちらが自分にとって満足できる住まいになるのかということがポイントかと思います。

この投稿では、既存住宅のリフォームもしくは建替えについて色々な側面から評価し、個人的な見解についてシェアしたいと思います。


◉既存住宅に関わる状態・状況の把握と改修後の理想像の確認が出発点


木造住宅の寿命は約30年といわれています。しかし実際には、個々の家の寿命は構造材の耐久性や仕様、メンテナンスの頻度で大きく変わってきます。これまでの経験上30〜40年経つと、外壁や屋根のどこかしら問題に感じる部分が出てきているケースが多いです。それでも、築100年経っていながらまだ居住可能な物件もあります。

1つ目のステップとして、既存住宅の状態や建物構成の確認、既存図面や確認申請書・検査済証と付属図面が残っているか、残っている場合に図面と実物の一致を確認する『簡易調査』を行います。簡単に言いますと簡易調査では設計者が確認申請書・検査済証に付属する建築図面と実物が一致しているかどうかを把握します。


ここで、既存図面が残っていない場合には既存建物の図面を描きなおすための実測調査、図面作成が必要になってきます。確認申請書・検査済証を取得しているかどうかは敷地を管轄する役所にて建築概要書を保管していますので、聞きに行けば教えてもらえます。(建築年代により残っていない場合があります)

確認申請書・検査済証が申請・取得されていない場合は、既存建物の安全性を役所協議が必要になります。(安全性を確認できる根拠資料がないため)

併せて『ご要望内容の確認』も非常に重要になってきます。例えば、増築をしたいのか、構造体(骨組み)だけを残して内外装は全て遣り替えたいのか、既存建物の活用は設計者に一任したいなど、既存建物の活用の仕方は様々です。例えば、法的にはある面積以上増築する場合には耐震補強が必要になってきたりしますので、次のフローとして耐震診断が必須になってしまうなど、フローが変わってきます。

2つ目のステップは、『住宅診断』です。住宅診断では民間機関から認定を受けた住宅診断士が既存建物の劣化状況を確認します。この診断を行うことで、問題視できていなかったことを発見し把握することもできますが、全てがわかるわけではないことは注意してください。

既存建物の活用の仕方を方針づける


3つ目のステップは、ご要望内容に合わせて改修範囲や仕方を方針づけることになります。

リフォームの範囲や程度によって以下のようにカテゴリー分けできます。

●部分リフォーム 家の一部を改修する規模な工事も部分的なリフォームを指します。イメージとしては建物の一部分を工事範囲として、他の部屋で生活はできるほどの工事規模です。一例になりますが、以下のようなものがあります。

・浴室・キッチンなど水回りや給湯設備を交換するなど ・外壁塗装や防水工事 ・部屋ごとの内装リフォーム ・太陽光発電を導入するリフォーム ・その他家の一部を改修するリフォーム


●全面リフォーム 内外装補修、増改築、耐震改修、断熱改修などを含む大規模な工事を指します。イメージとしては建物の全体を工事範囲として、既存建物では工事期間中は生活できないほどの工事規模です。全面リフォームすることで新築の住宅に近い使い勝手の良さ・住みごこちの快適さを手に入れることができます。

●スケルトンリフォーム 建物の内外装すべてを撤去して構造躯体(骨組み)だけを残し、構造の耐震補強や間取りの変更を含むリフォームをすることをいいます。骨組みだけにしますので、プランの制約はありながらも比較的計画や工事がし易く、雨もりや断熱補強といった壁や天井の中の問題をなくすことができることに加え、構造体の問題を把握しやすいメリットがあります。

既存建物で使われていた建材や建具を一部再利用するといったこともやりやすいです。

その他に「リノベーション」という言葉がありますが、これは「建物の再生、新たな付加価値の追加」といった意味合いがあり、例えば空き家を改修して飲食店として使うなどのように用途を変更する場合に使われます。



◉ スケルトンリフォームと建て替えを比較してみる


中古住宅をスケルトンリフォームするか、あるいは建て替えするかを検討するにあたり、それぞれのメリットとデメリットを比較してみます。

まず前提として、既存建物を活用する(=リフォームする)場合の方が、建て替えする場合に比べて完成までのステップ数が多く、計画的にも法的にも縛りが多いです。そのため、その分設計費用だけでなく工事費も高めに見積もられることが一般的です。ただ、建て替えは解体費用が必要になりますし、工期も長くなるためスケルトンリフォームと比較するとコスト大になるケースがほとんどです。


比較表はあくまで一般的なものですが、既存建物の状況は敷地状況、既存図面の有無によって各項目の評価は変わってしまい、どちらが良いとは一概に言えないのが改修・リフォームの特徴です。物件によってそれぞれの金額を確認し、上記の表を各物件にあった表に作りなおすことが必要です。

次以降の投稿では、本投稿の内容の補足や細かな説明をしていきたいと思います。

bottom of page