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家づくりにまつわること(17):建て替え or 全面リフォームをオススメする目安

更新日:2020年9月13日


 

前回の投稿では、中古住宅購入後の住宅診断について書きました。住宅診断が完了すると、診断士より診断結果が提出されます。これをもとにどこまで改修する方が良いのか、もしくは建て替えが良いのか、その片鱗が見えてきます。これに費用やスケジュールが条件付けされるとより明快になってきます。

この投稿では、建替えするか全面リフォームするか迷われている方に向けて、どちらをオススメするか判断の目安についてシェアしたいと思います。


◉こんな場合は『建て替え』がオススメ


当社が中古住宅の状況や建て主の要望を伺い、どちらがおすすめですか?と聞かれると、以下のような場合は全面リフォームよりも建て替えをおすすめしている目安です。


・中古住宅の築年数が30年以上の場合

一般的に日本の木造住宅の寿命は築30年とされています。したがって「築30年」は家を建て替える時期を見極めるひとつの目安といえるでしょう。しかし、私個人の経験上、築30年で問題が露見する(室内側に目視で理解できる)例は少ないです。40年を超えると外壁や屋根の劣化などの問題が原因で、例えば雨漏りして室内に雨染みとして現れることもあります。つまり、築30年〜40年の間に問題が生じ始め、40年を超えると室内側に露見するという感覚が実情に近いように思います。そのため、築30年と聞くとアンテナが張ります。

・今後30年以上住み続ける予定の場合

築30年以上の家をリフォーム設計でさらに30年長持ちさせることはできるとは言い難い場合もあります。これは全面リフォームで構造体(骨組み)のみを再利用することを想定すると、それが健全であるかを確認しなければ、把握できません。これを確認しようと思うと、建て替えか全面リフォームかと迷っている段階で構造体以外の解体を先行し、かつ基礎も一部コア抜き調査してコンクリートの圧縮強度等を確認するという、いくつかのステップがプラスされます。たとえこういった部分的な調査を実施しても全てが把握できるわけではないので、比較的大丈夫だという答えしか導かれません。しかし、いくつかのステップが増えるので、それぞれに費用もかかってきます。費用対効果を考えると建て替えが良いということになってきます。

しかし、建て替えを選択すればその後は比較的長持ちする家を持つことができます。予算さえ許せば長期優良住宅を目指し、60年~100年住むことが可能とされる仕様や計画で実現することもできるでしょう。


・全面リフォームの費用が新築費用の70%以上となる場合 全面リフォームの見積もりをとったときにその金額が新築費用と比較して約70%以上になる場合は、費用の安さというリフォームのメリットをあまり享受できないと考え、建て替えを選択することも考えてみても良いかと思います。


・希望する間取りや機能が全面リフォームでは実現できない場合 建て主が新しい家に望むプランがリフォームでは実現することが難しい場合があります。例えば、在来木造の住宅の場合構造的観点から他の工法よりも柱が必要になるため、大きな面積の無柱のLDKにリフォームしたいという要望には物理的に難しい場合もあります。

そのため、この対策に重点を置く場合は、建て替えをおすすめしています。

・水害や地震などの最新のハザードマップに不安がある場合

既存住宅の性能は、最新の各種ハザードマップへの対応できていない場合が多いです。このことに不安視し、対策を施したい場合は全面リフォームでは対策仕切れないケースが多く、費用対効果が望めないこともあります。そのため、この対策に重点を置く場合は、建て替えをオススメしています。


◉こんな場合は『全面リフォーム』がオススメ


一方、以下のような場合は、建て替えよりも全面リフォームをおすすめしている目安です。

・新築するよりも予算を抑えたい場合 新築するよりも予算を抑えて家を住みやすくしたいという場合には、全面リフォームがおすすめです。全面リフォームは一般的に建て替えよりは費用が抑えられます。また、予算の範囲内で可能な部分リフォームのみ行うなど費用と工事範囲のオプションをたくさんつくることができるという面で計画的、段階的に実施できるということもメリットです。

・2000年以降の最新の耐震基準で建てられている場合 詳細は別の投稿で書きますが、建築基準法の新耐震基準は1981年以降に実施され、2000年以降でさらに厳格化されました。2000年以降に建てられた家は最新の耐震基準を満たしているので耐震性能を確保できています。つまり、構造的な担保ができているので、ローコストに内外装や水回りの不満を解消しつつ、まだ使用可能な家を活用していく全面リフォームを第一に考えることをおすすめします。

・古い建物の佇まいの中に暮らしたい、愛着がある、残したいと考える場合 築年数が古い和風住宅ほど太い床柱や梁、玄関の踏み石など、今の技術や予算感では実現できない部材や空間が残っているものです。そういったものを廃棄するのではなく、活かして新しく機能的ながら古くの趣を残す魅力的な空間へとリフォームすることができます。

・再建築不可物件への計画の場合

「再建築不可物件」は、市街化調整区域内の建物や前面道路などが建築基準法を満たせない道路条件の土地、および現在建っている建物のことを言います。文字通り将来的にその建物を一度壊してしまうと、建て替えができない物件です。 例えば、道路と敷地が接している部分(接道)の幅が2メートル未満で前面道路ある場合、 建築基準法上の道路として認められていない道にしか接していない場合も再建築不可物件にあたります。この物件に対しては、増築やリフォームへの制約がある場合がありますが、建て替えはできませんので、リフォームでしか対応できません。

その他にも建て主が高齢だったり健康上の問題があり仮住まいや引越しに負担がある場合は、生活上の負担の少ない部分リフォーム段階的に計画していく方が適しているように思います。



この投稿では建て替えを選択するか、全面リフォームを選択するか、判断の目安について書きました。これらはあくまで目安であり、各物件により判断は変わってくるところです。迷われた時には、まず設計事務所にご相談ください!


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