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家づくりにまつわること(3): 建築家に家を依頼することのデメリット?

更新日:2020年6月7日

 

前投稿の復習ですが、設計・施工分離発注方式により建築家という「第三者」を建て主と工事会社との関係の中に入れることで、デザインや性能だけでなく、コスト・工事状況の透明性に加えて、建て主と工事会社の関係良好の継続を図ることができる、またハウスメーカーや工務店に依頼する場合と比較して、実現までの総額は大方同じであることをお伝えしました。


しかし、ハウスメーカーや工務店と比較して一般的に建築家を入れることによるデメリットが語られていることも事実です。しかし、総合的に考えた時に、当社ではそのデメリットはメリットでしかないと考えています。したがってデメリット?とハテナが付きます。

本投稿では、その内容について書きたいと思います。




◉ デメリット1:

  比較的時間がかかる、進め方がややこしい?


建築家に頼むということは、規格から選ぶのではなく、オーダーメイドです。そのため、まずは時間がかかります。(笑)

ハウスメーカーに頼めば半年で完成するものもありますが、建築家に頼んだ場合、設計契約から最低でも1年程は必要とします。

そして、進め方がややこしいとは、自動的には何も決まらないという意味です。

ハウスメーカーでは基本的に規格や標準があるため、建て主の意見が反映されにくいデメリットがありながらも、ある程度自動的に決まっていきます。これはとてもわかりやすいです。

一方で建築家に依頼する場合は、予算計画から始まり、計画や仕様を一緒に決めていくことになります。もちろん建築家側からの提案と説明とベースに一つ一つ決めていくイメージです。そのため、手放しにはできません。

このことをデメリットととるか、メリットととるかは人それぞれかと思いますが、そもそも家を長持ちさせるには、家自体を理解し、愛情を持つこと(意識すること)が大きく作用します。

家も子育てと同様に育むことをしなければ愛情などは芽生えません。

当社では特にこの設計過程を大事にしており、オープンなコミュニケーションの場を設けています。そのため、きちんと会話をしながら一つ一つを緻密に積み立てていける建て主を求めています。

工事中に家の形ができ始めると感動される方が多いことは、過程の積み重ねによる苦労が背景にあるからだと思います。

つまり、検討や実現までに「時間をかける」、「積極的に建て主の参加が必要」であることは建て主にとってはメリットであると思います。



◉ デメリット2:設計契約時には工事金額が決まらない ?


当然のことですが、設計契約前に工事金額を聞かれるケースがほとんどです。ハウスメーカー・工務店など設計施工一括発注方式を採用している会社は、工事まで自社で行うため基本的に設計契約前に示した金額内で納めなければ辻褄が合いません。つまり、プランもできていない状況におけるコスト算出の精度としては間違いないと言えます。


しかし、ここで私が思うのは、そもそも建て主の箇条書きの要望と敷地情報だけで共有された完成イメージが建て主側と設計施工会社側との間で一致しているか?ということです。

これは例えプランがあったとしても必ずズレています。極端な話ですが、棚の枚数がお互いの頭の中で違っても厳密にはコストが変わることは想像し易いと思います。

そしてその完成イメージが共有できていない上で算出された金額で住宅ローンの申請をしてしまうことで上限金額が固定され、将来的な問題(モメる、妥協する)の種となっているケースをよく耳にします。


一方、建築家に依頼した場合、大きく概算は伝えられるものの工事に対する金額は確定することができません。

しかし、打ち合わせをしながら決めていくことで、建て主側と建築家側双方が徐々に完成イメージを共有していけるため、見積りのベースとなる図面や模型の内容にズレがありません。

もちろん要望とコストを踏まえて、その中で計画していくことは行いますし、設計が完了する前(基本設計終了後)に、工事会社に概算をとる場合もあります。

そして、例え工事見積りが予算をオーバーした場合も、減額候補を検討・建て主に提示し、全体の調整を行います。

結果的に、妥協や後悔がない計画がしやすいメリットであるということです。




◉ デメリット3:クセが強い?


建築家はプライドが高い、クセが強い、建て主の要望を聞かないのでは? と聞かれることもあります。

もちろん稀にそういった方々も存在しますが、多くが要望はきちんと聞いた上でこだわりを持って設計される方々が多いです。デザイナーにとって、ちょっとのプライドやクセは持っている方が良いものです。

当社では、むしろ建て主の要望を条件の一つとしてとらえ、敷地・社会・文化からの与件を加えて総合的に判断し、提案します。そのため、どのような要望でもウェルカムであり、その反映が難しい時は、難しい理由を説明して、建て主に判断してもらいます。そのため、設計過程において、建て主の積極的参加が不可欠なのです。




ここまで3回に分けて建築家をプロジェクトに入れることのメリットとデメリットを書きました。総合するとメリットしかありませんね。(笑)


建築のように、人間一人ではできないことはチームを組む必要があります。建て主にとって、建築家を選ぶことは主要なチームメンバーを選択するようなものです。

住宅も量から質に需要が移っていますが、質を求める選択のあり方を考えて良い時期だと思います。


次回はもっと中身に踏み込み、建築家は皆同じか?について書きます!

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