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2020年 今年も大変お世話になりました!


 

今年は新型コロナ一色の1年でした。

普段のあり方が変わっていくなかで考えることも多かった1年でした。これは決して暗いことだけでなく、こういうタイミングだからこそ次代への新しい未来も考えられた良い機会だったと思っています。(人間の感情・思考はよくできています笑)


仕事納めに、今年の思考過程や各プロジェクトについて振り返ってみたいと思います。




◉新型コロナ禍に考えたこと・行動したこと


日本では4月に非常事態宣言が発出され、1月半ほどの自粛期間が続きました。

この自粛期間は住宅産業においては大きな意味があったように思っています。多くの人々が自宅で過ごす時間が半ば強制的に生まれたことによって、「住まう」ことに少し意識的になったからです。

実際にホームセンターや家具のECの売上は伸びており、自宅の環境を向上させる人々が増えていることもニュースで報じられました。これまで多くの人たちが1日の半分以上を自宅以外で過ごし、家には寝に帰るというように、ベッドタウンならぬベッドハウス化していたのだと言えます。このことが、家を建てる際の要望へも家を使う、住まうことへの意識を乏しくさせ、どちらかというと金額・部屋数・部屋サイズに意識がいきがちにさせていたのだと考えています。

自分の部屋やリビングルームというように自分を取り巻く環境を整備することに意識がいったならば、次は庭づくりなど自分の領域を広げていくことに意識が向くようになるでしょう。


一方で、地方移住について調べていると、東京を中心に都市部では地方移住への意識が新型コロナ禍以前から増加していることがわかりました。

この理由やどのような方々がどのような理由で移住されたのか、リサーチを兼ねて「地方移住と住まい」をキーワードに、各地に地方移住された方々からホンネ・ホンキを聞く・問いかける参加型トークイベントとして『イジューカフェ』を8月から3回実施しました。ゲストの方々から貴重なお話をして頂き、私自身も大変勉強になりました。



既に移住された方々(ゲスト)はもともと地方意識があったり、目的意識が高かったこと、年代や性別関係なく地方移住されたい方々は多いが、移住先の住まいに出会わなかったり、それを建て替えたり、リフォームする場合にはハードルがあることがわかりました。

それはそうです。ただでさえ、家自体にあまり意識的でない上に経験もない、その上に移住することがセットになっている。これはとてもハードルが高いことです。


このことを踏まえ、未来の働き方も自由になる時代の住まい方を重視した新しい住まいづくりのあり方として、地方移住のサポートも含めて『イジューハウス』を始めることにしました。

イジューハウスはスエロ建築研究所と協働して、「地方への移住をデザインする」 をテーマに、自然環境の中で理想の暮らしをお持ちの方々を対 象として、移住先の土地探し、住まいの設計、既存住宅の調査、暮らしの相談を通じて「あなたの現在地から移り住む」 ことをトータルにサポートするサービスです。

イジューハウスHP:https://iju-house.com/



これまでの供給型の住まいづくりでなく、丁寧に自分の暮らし方、過ごし方を大事にした設計やプロジェクトの進め方、そして移住という新しい地での場所やコミュニティなどいろいろなことをつなげられるようにしたいと考えています!


年の瀬ではありますが、外出しにくいこの年末年始にニューノーマルといった都市的変移ではなく、そもそもしたかった生活を具体的に考えてみてはいかがでしょうか!?





◉プロジェクトを振り返ってみます!


昨年に引き続き、当社は建築研究所らしく研究も日々行なっています。

今年参加したコンペティションから抜粋して振り返ってみたいと思います。



木々の下の大きなテーブルでリモートワークできる住まい

群馬県邑楽郡板倉町ニュータウン 住宅プラン

キーワード:日本・群馬県 / 専用住宅 / 115㎡ / 中庭 / 敷地の半分が庭 / リモートワーク / 書斎 / 新型コロナ


敷地となる板倉ニュータウンは東京都心から電車・車で約1時間の距離がありながら、自然環境が整備された新興住宅地です。

この計画では、新型コロナ禍を踏まえた新しい新興住宅地での住まい方を提案しています。



敷地の半分に主な建物ボリュームをまとめ、残り半分を大きなテーブルを配した庭として設えています。テーブルでありながら、住居へのアプローチでもあり、ベンチでもあり、ラグを広げるテラスでもあり、開放的な住まいを守るような周囲からの距離を自然と確保しています。コロナ禍によりライフワークバランスを検討し、自宅でリモートワークをしたい方を対象に、住居の中に篭るだけでなく働く場所や時間を選択し、地域の人々とソーシャルディスタンスを取りながら積極的に接することもできる、新興住宅地における大らかな生活環境を目指しています。





多様な「ヒト・モノ・コト」を集め・つなぐ飲食交流施設

伊根町伊根浦伝統的建造物群保存地区における伝建物を活用した地域活性化事業

キーワード:京都府与謝郡伊根町飲食+展示施設120㎡耐震補強海と屋根


伊根町は重要伝統的建造物群保存地区に認定された集落があり、入江にそって並ぶ舟屋から幹線道路を挟んで主屋、蔵が順にセットで並ぶように街並みが構成されています。

このエリアの伝統建築物を耐震改修して飲食施設にリノベーションする計画です。


伊根町の街の特徴を捉え、既存伝建物を最大限に活用し、フレキシブルな利用にも対応しながら、伊根町をアピールする飲食交流施設を目指しました。

テーマ①:様々な利用方針に対応することで利用促進し、伊根町をアピールする施設

テーマ②:伊根町固有の既存伝建物を残し、活かす施設計画

テーマ③:イニシャル・ランニングコストにも配慮した環境整備


既存建物の耐震改修計画では、できるだけ既存の架構を尊重し、客席部分は既存木造架構を現しにしています。柱間スパンが大きく補強が必要と思われる客席周りでは、レベルや断面サイズの違う既存梁間に3種類の部材をランダムに重ね合わせて重ね透かし梁を構成し、意匠性にも配慮した補強のあり方を提案しました。意匠的には客席と厨房の界壁には伊根市の「海と屋根」をモチーフとしたデザインを施す計画としました。




Open school for every relation

SENEGAL ELEMENTARY SCHOOL

キーワード:セネガル共和国 / 小中学校 / 950㎡ / 中庭 / タイヤと竹


セネガルでは、都市部を中心にゴミ処理の問題が深刻化しており、盛んな動車製造のもと現地で豊富に調達が可能なタイヤは分解・処理されるまでに必要な時間や焼却すると有害物質が発生することから、その処分をめぐっては大きな問題となっています。


この計画では、自動車タイヤをリサイクル利用してレンガ造よりも簡単にかつ短工期に建物を構築するシステムを探りました。タイヤの中空部分に粘土を流し込み、固めることで外からの荷重に対して強固で重量のあるタイヤブロックとなります。タイヤを建物の外形に沿うように並べて粘土を詰め、その上にレンガ積みのようにタイヤを半径分水平にズラして積んでいくことで誰でも構築ができながら、耐震性・断熱性・防音性に優れる建物となります。

 タイヤブロックで構成された壁の上には竹材で組まれる架構を組み、敷地内に中庭を囲うように分散配置された室同士を大きな屋根でつなぐ計画としている。分散された各室の間は中庭とつながったオープンヤードとしてベンチやテーブルといった滞留スペースを設けることで、昼食を食べたり、授業間の休憩をしたりと、偶発的なコミュニケーションを促すように計画しています。

現地で入手しやすい材料をもとに、できるだけ技術的な加工・工事のいらない方法により計画することで、現地での新しい建築様式のプロトタイプとなることを意図しています。





Lattice chair

キーワード:スツール / 格子 / 組子細工

京都の組子細工に習い、10×30mmの繊細な材を初歩的に積み上げることでスツールを提案しています。

ひとつひとつは石のように形は不揃いにしながら、それらを組み合わせることで色々な使い方を促し、その配置でさえデザインであり偶然でもある椅子のあり方を求めています。

ひとつひとつの不揃いなデザインをGrasshopperを用いて、形状操作から格子の長さを自動的に調整、出力することで、家具製作を簡易にします。


 

今年もたくさんの建築を中心とした環境を提案することができました!

引き続き、来年もイジューハウスや研究を中心に多様な建築について考え、挑戦していくことになります。


来年もどうぞお付き合いください!

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