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家づくりにまつわること(16): 住宅診断は人間ドックのようなもの


 

前回の投稿では、既存建物のリフォーム・リノベーションへのステップや建て替えとのコスト感含めた比較をし、それぞれのメリット・デメリットをまとめました。

その中で、2つ目のステップとしてリフォーム・リノベーションの計画をする前に既存建物の劣化状況を確認する住宅診断(ホームインスペクション)を行うことがベターであることを書きました。

この投稿では、住宅診断についてもう少し詳しくシェアしたいと思います。


住宅診断は中立的な専門家に依頼すべし


住宅診断はリフォーム会社などで無料診断を実施しているところもありますが、これはリフォームの受注をするための営業の一環として無料診断を行うので、中立的な判断がされているか不透明です。そのため、特にリフォームやリノベーションをリフォーム会社や工務店に依頼される予定の場合、住宅診断は信頼できる専門家に依頼することが望ましいと考えます。

専門家とは、①NPO法人日本ホームインスペクターズ協会が実施している試験に合格している住宅診断士、もしくは②既存住宅状況調査技術者講習を受けた建築士になります。

一般的な住宅診断は①のことであり、②はどちらかというと住宅売買の際に既存建物状況調査が義務化したことに対応するため生まれた新しい立ち位置になります。

加えて言うと、①は国家資格の有無は問いませんが、試験に合格した人が得られる資格、②は建築士という国家資格がないと講習を受けられず、調査技術者になるための試験は特にないという違いがあります。そのため、一般的には①なのですが誰でも試験さえ通過すれば実施できるということから、劣化状況がわかってもそれへの対策が技術的に正確かということは疑問が残ります。その点、②は建築士でないと実施できないため、劣化状況がわかった後の対策まで提案を受けることができるでしょう。

①の住宅診断士は、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会の公式サイトで都道府県別に検索することができます。費用は5~6万円程度が一般的で、機材を使用する診断の場合は10万円以上となることもあるようです。住宅診断の情報は、「リフォームか建て替えか」「どんなリフォームをすべきか」などを判断する上で、根拠となる重要な情報です。多少の費用がかかっても公平・公正な視点から診断を受けることができる専門家への依頼をおすすめします。



住宅診断は人間ドックのようなもの

多くの建て主は、インテリアのデザインの変更・間取りの変更を目的にリフォーム・リノベーションを依頼する方が多く、劣化状況や性能面に焦点を当てる方は少ないです。

住宅診断では、屋外部分(基礎、外壁、屋根、軒裏、雨樋、バルコニーなど)、床下(基礎、土台・床組み、床下断熱材など)、屋根裏、各部屋、設備機器の劣化状況を確認します。目視で確認できる範囲(床下・天井上は点検口から確認)は状況が確認できるので、診断結果は、機能的・デザイン的なところよりも住まいの安全性や性能に目を向けられる機会を与えてくれます。

診断結果が目に付く問題がない場合は、部分リフォームで対応することもできますし、何より安心できます。

一方、診断結果の中でおもわしくない部分結果が報告された場合、それは確認できたところの局所的な問題であるのか、住宅全体にわたって考えられる問題であるのか、考察する必要があります。こういった箇所から予算をかけて修繕していく方が良いことは言うまでもありませんし、住宅診断なしで改修計画を立てることは人間ドックを行わずに処方箋を書くようなものです。その結果、小さな問題を残して将来的に大きくなって表に現れるというケースもありますので注意が必要です。




この投稿では、住宅診断の中身や意味について書きました。

近年は「できるだけ費用をかけずに、既存の建物を利用する」を名目に、建物用途関係なく様々に多くのリフォーム・リノベーションがあらゆる所で行われていますが、劣化状況を把握してからという動きはあまりありません。

生活の拠点となる住まいにおいて、リフォーム・リノベーション前には劣化状況把握をセットに考えて頂きたいと思います!

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