デザインとはあまりにも曖昧な言葉で、カッコ良い・かっこ悪いと言ったルックスの判定の際に使われることが多い言葉ですが、これは本質ではありません。
今回は前投稿で書けなかったデザイン全般について、そして当社の考える建築におけるデザインについて書いてみます。
ぜひ、デザインの世界に足を踏み入れてみて下さい!
◉ デザインの語源・意味を知る
「デザイン」という言葉を調べてみましょう!
〈デザインdesign〉の語源は,〈指示・表示する〉を意味するラテン語の動詞designareに由来する語である。(世界大百科事典 第2版より)
この語源から、現在は以下のような意味に捉えられています。(デジタル大辞泉より)
① 建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。「都市をデザインする」「制服をデザインする」「インテリアデザイン」
② 図案や模様を考案すること。また、そのもの。「家具にデザインを施す」「商標をデザインする」
③ 目的をもって具体的に立案・設計すること。「快適な生活をデザインする」
そもそもの語源を見ると「指示する・表示する」とあり、極めてシンプルです。
そして、指示する・表示することに必要なものが「意識する」ということであり、デザインに共通した本質だと思います。
◉ 意識することがデザインとなる
次にこの「意識する」ことが様々な分野ではどのように現れているでしょうか。
例えば、ファッションデザインで意識されることといえば、思いつくだけでも素材(パターン含む)、形状、機能性、コスト、販路、歴史でしょう。
キャリアデザインで意識されることといえば、自分の性格、目標、スキル形成、資産形成といったことでしょう。
そして、どの分野でもそれぞれ意識することのキーワードがそれぞれバランスをとった形で、商品やサービスとして提供されています。バランスを取るということは、関係者(製作者、卸業者、販売者、消費者など)や関係物(素材同しの納まり、他者製品との関係など)が皆納得している状況を指します。
ここで、どれかのキーワードを意識して考える時、他のキーワードも影響しますので、バランスの取り方もデザインされている(意識されている)ことになります。
例えば、ファッションデザインにしても、マーケティングも踏まえたコスト設定から、機能性が考えられた上で服の形状や素材が決まっています。そして、形状を考える時、ファッションの歴史との関係を考慮し、素材の柔軟性や単価を確認しながら、形状を決めていくことになるため、そのバランスを取ること自体をデザインしている(意識している)というわけです。
これを突き詰めると、誰もが日常的にデザインしていることになります。
1日の過ごし方、鏡の前で服を選ぶ時、職場のデスク周りの状況、職場関係者とのコミュニケーションの仕方、夕食を盛るお皿を選ぶ時、そしてそれのテーブルへの置き方・順序など生活の隅々まで意識すれば、デザインで溢れているのです!
◉ 建築におけるデザインの特殊性
一方、建築デザインという分野において意識されることについてはどうでしょうか。
素材、形状、構造、設備、機能性、施工の合理性、環境、周辺との関係、時間、体験、コスト、スケジュール、風土、歴史、未来、、、など幅広いことがわかります。
そのひとつひとつの側面と対話し、組み立てていく必要があるため、膨大な検討量が必要になります。建築という分野において、その対象となる意識されるべき側面が多く、複雑であるため、プランや素材など何か決めようと思っても一つの情報からは決定されづらいというところが建築デザインの特殊なところです。
もっと言えば、建築という不特定多数に影響のある対象は、その側面の量をできるだけ多くすることが、より良い建物の在り方を探ることであることは言うまでもありません。
しかし、ここで意識するにしても、それぞれの側面をバラバラに思考・判断してもまとまりません。
この思考の方向と判断の基準として、皆で共有できるキーワードやストーリーが必要とのことで「コンセプト」という考え方が登場します。
ざっくり言いますと、各側面がこのコンセプトに合致しているかどうかという判断になっていきます。
しかし、間違ってはいけないのは、建築ほど多数の側面を統合しようとする場合に、このコンセプトだけでは語れない部分がほぼ確実に出てきます。
従って、コンセプトがまずあって、全てがそれに沿って決まっていくということは、建築においては、まずありません。
そういった語れない部分は合理的に、または別の考え方を持って計画全体をできるだけ少ない言葉で各側面を統合することで、建築におけるコンセプトとは次第に出来上がっていくものです。
そして、さらにそれを建物の構成する細部にまで、意識を持って関連づけると我々の心に響く建物に近づくと言えます。
ゴルフでも少ない打数でカップインする方が高得点であり、しかも、絶妙な軌道でそれが成されれば、誰もが驚くパフォーマンスとなるでしょう。それを意識的かつ計画実行できれば、そのゲームをデザインしたことの結果となります。
◉ メラスタが実現したいデザイン
当社では、デザインについて主に2つを追求しています。
1つ目は、実際に計画する建物についてです。
それは、ユーザー(建て主)自身が1日の過ごし方やその一時をデザインしたくなる建築・場をつくっていきたいと考えています。
1日を快適に過ごそうと思うと、開放的な場に身を投げ出して自然環境に触れてみたり、時には誰にも邪魔されない籠もったスペースで読書をしたり、心地よい居心地がたくさんある環境を常に考えています。
これは住宅だけでなく、どのような建物でも必要な環境だと思います。
一般的な象徴的LDKと個室群という形式的なものではなく、広い世界の中に自分の居場所があるような、そういった自由のある空間の方が良いと思うのです。
そういった人間の可能性を引き出す力も建築に備わる力の1つであると信じているのです。
2つ目は、計画の過程についてです。
前述の通り建築という分野においては、デザインされる側面を増やす方がより良い精度となるため、デザインされる(意識される)側面の量をできるだけ多くすることを目指しています。
そのため、プロジェクト自体を関係者にできるだけオープンにし、積極的な参加を促す環境づくりを実践しています。様々なバックグランドを持った人がこの背景を理解して、意見を投入し、ひとつの建築物をつくっていく。
そしてそのコミュニケーションスピードを最大化できれば、「意識できていること」の数も増えるはずです。
◉ それでもやっぱり大切なのは、建て主の生活感
どれだけ広い側面を拾おうとも、一番大事なのは建て主の生活感(今後どのように住まいたいのかという理想像)であり、計画の芯になります。
その生活感からヒントを経て、各側面やその関係をデザインしていくことになるからです。
まずはいろいろな事例を見て、住まいの理想を持ち、家族内で意見を言い合って共有する。そして、その過程を楽しむ。その想いを持って、建築家に相談をする。
それが家づくりにおけるデザインの第一歩なのかもしれません。
これまでデザインの意味と建築におけるデザインについて記載しましたが、いかがでしたでしょうか。デザインの世界は、まだまだ奥深いものですが、その前段に触れてもらえていたら嬉しい限りです。
しかし、現在の家づくりは、前述のように理想的なものではありません。
多くの人の第一歩が、敷地情報をハウスメーカーや建築設計事務所に渡し、部屋数やテイストを伝えて、「間取り」と「コスト情報」を集めようと動かれます。
しかし、これを建築業界の動きと一緒に考えると、あまり賛成できるものでもないと考えています。
次回は、建築パートナー選定前の「間取り」と「コスト情報」の意味について書きたいと思います!
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